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MCP / RAG で広がる業務AIの可能性

約6分

ChatGPT などの生成AIを触って「賢いのは分かったが、うちの業務には使えない」と感じた方は多いはずです。汎用のAIは、あなたの会社の商品も、規程も、過去の案件も知りません。この距離を埋める技術が RAG と MCP です。仕組みを平易に押さえておくと、ベンダー提案の見極めにも役立ちます。

RAG — 自社の知識で答えるAI

RAG(Retrieval-Augmented Generation/検索拡張生成)は、質問に答える前に、社内の文書——マニュアル、規程、過去案件、議事録——から関連する情報を検索し、それを根拠に回答を組み立てる仕組みです。「就業規則では慶弔休暇は何日か」「この症状の過去の対応事例は」といった問いに、自社の情報で答えられるようになります。

押さえておきたいのは、RAGの精度は AI の賢さよりも、元になるデータの整理に左右されるということです。古い規程と新しい規程が混在していれば、AIはどちらも根拠にしてしまいます。導入の実務は「AIをつなぐ作業」よりも「社内の情報を、探せる状態に整える作業」が主戦場になります。ここを飛ばした RAG 導入は、期待外れに終わりがちです。

MCP — AIと業務システムをつなぐ共通規格

MCP(Model Context Protocol)は、AIが社外・社内のシステムやデータとやり取りするための共通規格です。これまでAIと業務システムの連携は、組み合わせごとに個別開発が必要でした。MCPという「共通のコンセント形状」が普及したことで、AIから販売管理、勤怠、チャットツール、データベースといった既存システムへ、標準的な方法で安全につなげるようになってきています。

経営の視点で重要なのは、これが「AIが答える」から「AIが動く」への転換点だということです。情報を探して要約するだけでなく、システムを参照し、データを取得し、処理を実行する。AIが業務の中に入り込むための配線が、標準化によって現実的なコストになってきた——これが今起きている変化です。

「答えるAI」から「動くAI」へ — エージェントという方向

RAGで自社の知識を持ち、MCPで業務システムにつながったAIは、AIエージェントとして定型業務を担えるようになります。問い合わせの一次対応、複数システムを横断する転記、定例レポートの下書き——「調べて、まとめて、入力する」型の仕事が候補です。

ただし、生成AIは確率的に振る舞う技術です。100%の正確さが必要な処理と、人が最終確認すれば十分な処理を切り分け、どこまでを任せるかの線引きを設計することが、実務では技術選定そのものより重要になります。何でも任せられる魔法ではなく、「どこに置けば効くか」を見極める道具だと捉えるのが健全です。

成否を分けるのは、技術ではなく現場

RAG も MCP も、技術としては既に手が届くところにあります。それでも成果に差がつくのは、データの実態、入力の手間、運用の摩擦といった、現場に入らなければ見えない壁があるからです。会議室の構成図では動いていたものが、現場のデータの汚れひとつで止まる——AI案件では日常的な光景です。

だからこそ私たちは、構想を描く人と実装する人を分けず、現場の隣で「動くまで」作り切る進め方(FDE)にこだわっています。小さく本番に載せ、現場の反応を見ながら磨き込む。技術の可能性を、自社の現場で使える形に翻訳するプロセスこそが、業務AIの本体だと考えています。