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そのAI提案、進めて大丈夫か — 経営者のための7つの質問

約6分

AIブームのいま、経営者のもとには次々とAI関連の提案が届くようになりました。断る理由も、進める確信もないまま、決めきれない提案だけが机に積み上がっていく——。技術の中身が分からなくても、提案の「構造」は見極められます。経営と技術の両面から提案書を見るとき、私が確かめている観点を、7つの質問として公開します。

質問1〜3: その提案は「課題」から始まっているか

質問1「この提案は、当社のどの課題を解決するのか。それは誰が言った課題か」。提案書の冒頭が製品説明から始まっていたら、注意信号です。良い提案は、貴社の業務のどこが詰まっているかの記述から始まります。そして「誰が言った課題か」も、同じ重みで確かめてください。現場から挙がった課題なのか、ベンダーが一般論として想定した課題なのか——出どころが社外にしかない課題は、導入後に「実は誰も困っていなかった」という形で返ってきます。

質問2「効果は、どの数字で測るのか」。「業務効率化が期待できます」は答えになっていません。処理時間か、対応件数か、残業時間か——導入前に測り方が決まらない施策は、導入後に成功とも失敗とも呼べません。ベンダーが数字の定義を一緒に考えてくれるかどうかは、伴走姿勢の試金石でもあります。

質問3「当社のデータの実態を、見てから言っているか」。AIの成否は、モデルの性能よりもデータの実態で決まることが少なくありません。散らばった Excel、更新されていないマニュアル、人によって書き方が違う日報——それを見ずに出てくる見積りと納期は、良くて概算、悪ければ絵空事です。

質問4〜5: 進め方は「小さく・本番前提」か

質問4「一番小さく始めるなら、どこからか」。最初から全社導入・大規模構築を勧める提案は、それだけでリスクです。AI案件には、やってみて初めて分かることが数多くあります。小さく本番に載せて、確かめながら広げる設計になっているか。目安は、一部門・一業務に絞り、数週間から2〜3か月で本番の業務に載る規模です。最初の見積りがそれを大きく超えているなら、「確かめながら進む」設計を最初から手放している提案だと読めます。

質問5「作った後、現場で使われ続けるまでの工程は、誰の仕事か」。納品して終わりの契約なら、定着の責任は貴社側にあります。それ自体は悪ではありませんが、「導入後の定着支援」が見積りに入っているか、入っていないなら誰がやるのかは、契約前に明確にすべき論点です。「作ったのに使われない」の多くは、ここが空白のまま始まっています。

質問6〜7: 撤退と自走の設計はあるか

質問6「うまくいかなかったとき、どの時点で、何を基準にやめられるか」。撤退基準を嫌がるベンダーとは組まない方がよい、というのが私の考えです。基準は精緻でなくて構いません。「3か月時点で、対象業務での利用が想定の半分を下回っていたら縮小する」——この程度の粗さでも、先に置いてあるかどうかで判断の質が変わります。AIは確率的に振る舞う技術で、やってみないと分からない部分が必ず残ります。だからこそ、続ける・広げる・やめるの判断点を先に置いておくことが、挑戦の総量をむしろ増やします。

質問7「この仕組みの中身とデータは、当社に残るか」。特定ベンダーにしか触れないブラックボックス、外に出せないデータ、社内に何も残らない運用——依存の設計は、あとから変えるほど高くつきます。具体的には、契約書で三点を確かめてください。データの帰属が自社にあるか。プロンプトや設定を含む成果物の権利がどちらにあるか。解約時に、データを実務的に持ち出せるか。口頭の説明ではなく、条文で確認する価値のある論点です。

この7問を、どう使うか

改めて、7つを並べます。(1)どの課題を、誰が言ったか。(2)効果はどの数字で測るか。(3)データの実態を見てから言っているか。(4)一番小さく始めるなら、どこからか。(5)使われ続けるまでの工程は、誰の仕事か。(6)何を基準に、やめられるか。(7)中身とデータは、当社に残るか。次の提案の場に、この一覧をそのまま持ち込んでください。

7つすべてに完璧な回答を求める必要はありません。大事なのは、ベンダーにこれらの質問へ向き合う姿勢があるかどうかです。誠実な提案者なら、答えられない部分を答えられないと言い、一緒に考えようとするはずです。質問への反応そのものが、いちばん正直な情報です。

それでも判断に迷うときは、利害のない第三者に提案書を見せるのが早道です。私たちも、経営と技術の両方の目でベンダー提案のセカンドオピニオンをお受けしています。その提案が過剰でも過小でもないか——契約書に判を押す前の30分が、大きな意思決定の質を変えることがあります。